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蒼穹 -そうきゅう-

聴覚障害者の職場放棄

聴覚障害者の転職率が、他の障害者と比べ、
ダントツで高い(40%超というデータもある)という(※1)

(※1)〔参考記事〕
 →当ブログ
  『障害者団体のILOへの提訴文書について、思うこと』
  (2011-07-04 00:50)


離職理由として「人間関係」が特に高いことから、
「関係障害」が深刻になりやすいことが分かると思います(※2)

(※2)〔参考資料〕
 →http://www.zentsuken.net/pdf/houkoku2010_02.pdf


そのため、聴覚障害者本人が深く悩み、
場合によっては自ら退職し、
その後も再就職が難しくなってゆく人もいます。
そして、この退職方法で意外によくあるのが、
実は「職場放棄」なのです。

聴覚障害者といっても色々な人がいます。
だからどのような聴覚障害者でも職場放棄が多い、
というわけではありません。
ただ、特にろう学校出身のろう者が職場放棄をするのを、
私は多くの会社で見てきました。

反対に親の方針やインテグレーション教育などで、
健聴者とともに普通学校で育ってきたろう者は、
そういう問題を起こしたという事実は少ないようです。

はじめは積極的にろう者を雇用していた会社でも、
実際はろう学校出身のろう者の職場放棄が多く、
勤務態度なども悪いことから、だんだんとろう者に
対する評判が悪くなっていき、ろう者が離職すると
その後はろう者を雇用しなくなる、という事例があります。

このことはつまり、ろう者全体への社会的評価に影響
していることも事実です。

「もう、ろう者は採用したくない」

という会社も出てくる大きな原因の一つが、
ろう学校出身のろう者が繰り返している「職場放棄」
にあるのです。

ろう者が職場放棄してしまう背景は必ずあると思います。

しかし、会社の健聴者はそれへの理解よりも、
やはり、ろう者が職場放棄した事実を重視します。
その事実がある以上、会社は就業規則に則り、
もはやろう者に退職を勧奨する以外、
手を尽くさなくなります。
普通は解雇ですが、会社はこのような場合でも、
絶対に解雇にはしません。
ろう者が犯罪行為を行っても、
決してクビになることはありませんでした。
むしろ、会社は障害者事件を隠蔽するのです。
隠蔽しても、世間では会社側の恩情と見られるので、
これは会社にとって好都合、やりたい放題です。
また、ろう者をクビにすれば会社にとってデメリットはあっても、
メリットは何もないことも、会社は知っているからです。

その理由はこれまでに述べてきましたように、
もし解雇すると企業側には障害者雇用助成金が凍結される
可能性があるからです(※3)

(※3)
http://jyoseikin-concierge.com/blog/jyoseikin/specific-job-shortage-jyoseikin01/


しかも、こんな場合でも会社が自主退職を強要するのは、
会社側にも非がある、とはならず、
むしろ恩情とみなされます。
だからこの聴覚障害者の就労後問題の背景
(会社側の配慮が足りなかったために、
このような事態が引き起こされてしまったこと)
は無視されてしまいます。

もう、ろう者は会社が強要する「自主退職」に応じる以外、
選択肢はなくなります。
だから私は

「聴覚障害者の就労後問題は結局、
こういう末路に至り、そして隠蔽される」

と思うのです。

聴覚障害者は「協調性を欠く」という理由で、
もう職場には復帰できなくなります。


はじめのうちは

「聴覚障害者はコミュニケーション以外は、
何でもできるから」

と言って、それまで何人ものろう者を
積極的に採用してきた会社でも、
ろう者の自分勝手な行動を度々
目にしているうちに、
ろう者への社会的評価はますます
下がってゆきます。

そして

「もう、ろう者は雇いたくない」

という方向へ変わってしまうのです。

これが

「聴覚障害者は雇いたくない」
(ろう者も含めて、「聴覚」の身体障害者手帳を
持つ障害者すべてが)

と誤解されていくのです。

すると「聴覚障害者は採用しない」という図式が
会社でもハローワークでもできあがってしまうわけです。
裏情報(※4)の存在を知ればわかることです。

(※4)当ブログ
   『ハローワーク求人票の「裏情報」に思うこと』
   〔2012-05-03 09:59〕
参照。


裏情報はまさに、「クリーミング」(※5)ではないでしょうか。

(※5)当ブログ
   『障害者間格差=不公平社会をつくるもの』
   〔2012-08-28 19:21〕
参照。


聴覚障害者の皆が、一部のろう者の
ように協調性がないのではありません。
しかし、私も今までに、複数の会社で
ろう者の先輩後輩を見てきているし、
また健聴者からも、ろう者についての
評価を聞いたことがあります。


【聴覚障害者の退社事例(1)】
『すぐ辞める』
M社に就職したろう者Aさんは、真面目に働いていて、
仕事も順調にこなしている、と思ったのですが、
わずが2週間で退職してしまいました。
退職理由はわかりません。


【聴覚障害者の退社事例(2)】
『精神的に不安定で、仕事が長続きしない』
(1)に続いて、M社でAさんの後に就業したBさんも、
初めの一ヶ月ほどは働いていましたが、
真面目に働いていたのは2週間ほどで、
その後はさぼるようになりました。
そして、一ヵ月後あたりから次第に休むようになり、
それがだんだんと増えていきました。
半年か一年後、保健師から「心の風邪」と言われ、
半年間の休業期間を与えられました。
そして職場復帰し、他のろう者のいる職場へ
配置転換をしてもらう、という配慮もしてもらいましたが、
すぐ休む癖がまた再発し、自主退職することになりました。

【聴覚障害者の退社事例(3)】
『集団で、一緒に辞めていってしまう』
M社で一緒に働いていたろう者のCさん、Dさんは
営業部の書類を運ぶ仕事をしていましたが、
半年で一緒に辞めてしまいました。
退職理由はわかりませんが、半年契約だということもあり、
本人たちが自ら契約更新をしなかった可能性があります。


【聴覚障害者の退社事例(4)】
『すぐ辞める』
R社では、ろう者Eさんは働き始めて、
わずか2日で職場放棄してしまいました(※6)

(※6)当ブログ
  『2日で職場放棄してしまった、ろう者』
  〔2010-01-09 18:00 〕
参照。


R社の人事担当者は呆れて

「ろう者はもう…」
(雇用したくない、ということ)

と話していました。


【聴覚障害者の退社事例(5)】
『正当な理由なく、会社を休みだす』
Q社のろう者Fさんは「体調不良」を理由に休んでいました。
しかし、実はFさんは副業を持っていて、
そっちのほうが自分のやりたいことだと言って、
会社員を辞めることにした、という。
副業のことは当然、会社も知らない。
職場の人は、理由がハッキリわからないという顔をしながらも
「Fさんは体調不良で休んでいる」と思っていました。
もしもFさんのこの行動を知ったら、会社はどう思うだろうか。


【聴覚障害者の退社事例(6)】
『仕事が長続きしない。正当な理由なく、会社を休みだす』
Q社のろう者Gさんもやる気をなくし、会社を休むようになりました。
「もう会社に行きたくなくなった」と話していました。
しかし、それが理由で休む人を、会社は当然許さない。
Gさんは職場復帰の希望を伝えたが、会社は受け入れず、
最終的にGさんが自主退職することで決着がついた。


【聴覚障害者の退社事例(7)】
『精神的に未熟さがある』
F社で働いている難聴者Hさんと偶然、会いました。

「どこへ行くの?」と聞いたら、

「パチンコに一週間で百万円つかってしまった」

とこぼしていました。
なぜパチンコ通いをしているのかと聞くと、

「会社で嫌なことがあって、今は行きたくないから。
仕事のことで、上司に怒られた」

この場合は結局、Hさんは職場放棄はしたが、
会社を辞めなかった。


【聴覚障害者の退社事例(8)】
『すぐ辞める』
M社のろう者Iさんは働き始めてから五ヶ月で辞めてしまいました。
Iさんがいる間、ろう者がもう一人入ったが、すぐに辞めていったそうです。
Iさんはそれよりも長く働きましたが、結局、
最後は職場放棄して職場の人から不評を買うことになりました。

その後に続いて雇用されたろう者Jさんも、
評価がよくありませんでした。
会社はJさんにIさんの職場放棄の事実を説明し、

「このようなことは、ろう者の将来にとって良くない」

と厳しく話しました。
Jさん自身も会社から

「本当なら、あなたはもう要らない。
だが、クビにはしない」

と厳しく言われました。
会社はさらに、Jさんに

「耳が聞こえないから、仕事がもらえないのではない。
仕事ができないのではない。
能力もやる気もないから、仕事をもらえないし、
与えられてもできないのだ」

と伝えました。



ろう者は

「病気で休む」

と言うが、これは本当だろうかというと、
そうではないことも多い。
会社もそれを見抜いていることを、
ろう者自身はわかっていたのだろうか。

会社を休み続けていた、あるろう者は

「会社に行きたくない」

とこぼしました。
ろう者が精神的に追いつめられているのは、
よくわかります。
職場を転々として、その何年もの間孤立したまま、
働き続けてきた精神的苦痛の蓄積は相当なもので、
健聴者には理解できないでしょう。
しかし、だからと言って、仮病を理由に使って度々休むことは、
容認されません。
精神科病院からは「うつ病」との診断書をもらい、
それを会社に提出すれば休み続けられる、という。

だが、仕事ができない病気なのではありません。
それで休んでいる間にパチンコに行ったり、
手話サークルには出ている、
というのでは、本当にうつ病なのかという疑問が
出て当然です。

このあたり、病院も安易に診断書を出したりして、
精神科の患者を水増ししているんじゃないか、
という疑問さえ出てきますが。

ともかく、仮病とか、ウソの理由を言って
会社を休むろう者は結構います。
これは、職場放棄と見なされて当然です。
ただ、会社もはじめは、そこまでよく知らない場合が
多いようです。




ある日の朝、突然、職場の健聴者が

「前のヤツ(ろう者)も、こういうふうにばっくれたんだ!」

と言い出しました。

つまり、私はろう者で二人目の職場放棄者を目にしました。
私はそのろう者と一緒に仕事をしたことはほとんどなかったが、
ろう者はこの職場に馴染めていないな、とは感じていました。

というのも、そのろう者は気弱そうで仕事を覚えようとする
積極性が見られなかったし、休憩時間もろう者とは手話でよく話すが、
健聴者とは一緒に話そうともしませんでした。
やはりというか、職場での人間関係に悩みがあるようでした。

その予感が的中し、そのろう者は結局、
職場放棄して辞めていくことになりました。

それ以前にも職場放棄して去ったろう者がいた、という。

あるろう者の、休み(休業)に入るパターンの例です。
最初は

「妻が病気になったので、病院に行く為に休みます」

という、会社側もあまり納得のできない理由で休みだしました。
その次の日も、またその次の日もろう者はそう言って「休みたい」、
と携帯メールで上司に連絡します。
そのうち、しょうがないから上司は

「もう今週は仕方ないから、休んでいい。
来週から出てきてください」

と伝えることにします。
その間、一緒に働いてきた職場の健聴者たちからは

「なぜその理由で何日も休むのだろうか」

という疑問が持ち上がっていました。

そして一週間後、そのろう者はまたも、
出勤時間になっても出社してきませんでした。

後から聞いた上司の話によると、
理由は本人から

「仕事を続けていくことに自信がなくなったので、
辞めたい」

と携帯メールで伝えられた、というものでした。
休んでいた本当の理由は、このことのようでした。

そのろう者の面倒を見てきた上司も、
その理由の意味がよくわからない、と言います。

もともと、ろう者が自分からやりたいと
希望した仕事なのに、
なぜわずか一ヶ月で投げ出すのだろうか。
それも、今まで全くやったこともない仕事を
やり始めたからといって、
わずか一ヶ月でこんな弱音を吐いて逃げ出すのは、
いかがなものだろうか。
自信なんてすぐには出てこないのは当然だろう。

健聴者は当然、誰もその理由に納得していません。
健聴者の皆からは

「あのろう者は、逃げたんだ」

と思われているのです。

それ以上に問題なのは、この職場放棄だろう。
職場の皆にどれだけ迷惑をかけたのか、
まるでわかっていない自己中心ぶり。
その後、会社はろう者にロッカー内の私物を整理し、
退職届を出すように伝えたのですが、
ろう者は来ないまま、一ヶ月以上も過ぎたのだという。

会社の人が言うには

「ろう者本人は、病気だからしばらく休ませてもらっている、
と思っているのだろうが、こういうことは社会では通用しない」

とハッキリと職場の皆に話していました。
もちろん、他の残って働いているろう者も、
そこにいました。

こういうことをしたろう者は、
もう職場復帰はできないし、
この会社ももう、ろう者を新たに雇おうとは思わなくなります。
これは、ろう者の自己中心な行動が招いた結果です。
それは聴覚障害者差別ではなく、聴覚障害者が自ら招いた結果なのだ、
と健聴者は言うのです。

職場放棄のみならず、会社への不満を一気に爆発させ、
腹いせにこういう非常識なことをやる、
ろう者の行為を見た職場の人たちからは当然、、
聴覚障害者理解は得られません。
健聴者はもう、手話も学ぼうとしなくなりました。
このようなワガママな聴覚障害者が何人もいるために、
会社に残って頑張っている聴覚障害者は大変になってきます。
こういうことが企業の

「ろう者はもう雇いたくない」

という結論に結びついて、拡大していっているのだと
思われます。
そして、職場の聴覚障害者理解も当然、
遠くなってゆきます。



職場放棄は、許されることではありません。

ただやはり、こういう事件があちこちの会社で起きている、
ということは、聴覚障害者が日々受けている精神的苦痛は、
健常者や他の障害者(健聴者)の比ではない、
ということもあるのだと思います。



〔参考資料〕(2013年3月20日追記)
『聾学校高等部卒業生の課題と就労支援について
── 職場での課題と卒業後の支援の現状 ──』
(岩 本 朋 恵 、濵 田 豊 彦)

http://ir.u-gakugei.ac.jp/bitstream/2309/65482/2/18804306_58_29.pdf

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by bunbun6610 | 2012-09-08 18:33 | 就労後の聴覚障害者問題B