障害者間格差=不公平社会をつくるもの

『哀れみはいらない―全米障害者運動の軌跡』(著者: ジョセフ・P. シャピロ /現代書館)

 →http://booklog.jp/users/miyamatsuoka/archives/4768434185

(参考)臼井久実子
 →http://www.yuki-enishi.com/guest/guest-020529-1.html




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「障害の程度によって人々の人生を左右する
福祉の制度がいかにあてにならないか。

ロバーツは今までの人生で十分といってよい
ほどこのことを証明してきたが、このときほど
痛切に感じたことはなかった。
(カリフォルニア州リハビリテーション局の)
局長に就任したロバーツはリハビリ局の制度
改革を促した。
もともとここでは、自立生活センターのような
各種サービスを直接提供するか、民間の団体
に委託していた。
けれどセンターと違い、障害者を何人就職させ
たかという達成数に重点が置かれていたので、
その数さえ十分であればよかった。
そうすれば、局も委託のサービス提供団体も
ほぼ無条件に州や連邦の補助金を取得できる
ようになっていたのだ。

数字を上げること自体はそれほど難しくなかった。
ロバーツは、こういう制度を、
「クリーミング(creaming=上層の部分だけを
抜き出すこと)」
を助長しているにすぎないと批判した。

リハビリ局のカウンセラーは、事業報告書上の
就職者数を多くするため、軽度の障害者だけを
対象にサービスを提供する傾向にあったからだ。
これはリハビリ局の伝統にさえなっていた。

逆に言えばロバーツのような重度の障害者が
サービスを求めても、就職援助などあっさり断ら
れていた。
あまりにも大変すぎるという理由で相手にも
されていなかったのだ。

このような実態はサービスを受けられない人たち
を生み、バークレーの自立生活センターは
そういった人たちを救った。
CILはリハビリ局と違い、利用者数や就職者の
増加数でサービスの成功をはからない。
いわばもっと曖昧模糊とした測定するのは難しい
「自立生活」の達成を目標にしていたからだ。
リハビリ局長になったロバーツは、この一見して
矛盾しあう自立生活とリハビリの原則の統合に
努力した。」



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日本でも「クリーミング」という現象を、
思い当たらないでしょうか?

当ブログ
『企業イメージを重視 求める人材を奪い合い』
〔2012-04-12 19:21〕

を見れば、企業も負担の少ない軽度の障害者を
雇用したがっていることが、
わかるだろう。
例えば企業は

「聴覚障害者ならば、耳が聞こえないだけだから」

という安直な考え方で、聴覚障害者しか
雇用しないところもあるほどです。
聴覚障害者を雇用するだけで終わりにする
のです(※)


(※)〔参考記事〕
当ブログ
『公用語が“日本手話”と“書記日本語”のカフェ』
〔2012-05-15 22:33〕


一方、ハローワーク専門援助第二部門
(障害者就労援助等をする部門)の目標は、
法定雇用率達成です。
その質ではなく、実雇用率1.8%という量を
達成することだけしか、頭の中にはないのです。
だから、その数字になるように、
障害者を企業に押し込めることだけを
考えています。
それには「クリーミング」手法がいいのは、
日本でも同じようです。
そして障害者を雇った企業には、
国をあげて報奨金(名目上は「助成金」)を
与えています。

「障害者を食いモノにしている」

とは、まさにこのことです。
その一方で、重度の盲ろう者などの就労支援
は、放置したままなのです。
今の障害者雇用は、そういう既成のシステム、
つまりクリーミングに基づいているように
思います。

これは障害者だけに限らないと思いますが、
障害者間の格差を拡大させてしまう、
不公平な施策といえると思います。


仕事に就けない重度障害者には、暗黙に

「重度障害者は、もうダメです。
あきらめたほうがいいですよ」

とでも思っているのでしょうか。
でも、そんなことは言えるわけがありません。
だから障害者差別という現実を変えるよりも、
こうしたことでできてしまった限界を放置
している、のではないでしょうか?

障害者雇用助成金制度の恩恵を受けて
いるのは、できるだけ手の掛からない
障害者だけだ、といえるのかもしれません。
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by bunbun6610 | 2012-08-28 19:21 | 哀れみはいらない

ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610