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変わらない気持ち

レストランのなかで、三人の健聴者が
楽しそうに話している。
そして、私はその光景を羨ましげに、
いつまでも見つめている。

何十年もこのような単純なことを繰り返してきて、
飽きたことがなかった。

それは、変わらない自分の気持ち、
永遠の憧れだった。

その気持ちが、ブログ・タイトル
『蒼穹 -そうきゅう-』になっている。

〔参照記事〕
 →『ブログ・タイトルの意味 (1)』
   (2012-01-14 00:11)参照。

人間にとって、聞こえることは決して、
当たり前なのではないという事実。
そして自分だけ、それを受け入れなければ
ならないという事実。
(実際には、自分と同じような人が
世の中にたくさんいるらしいが、
私がその人たちと出会うことは稀である)

聞こえに不自由のある人間に生まれたからこそ、
そして聞こえる世界も知っているからこそ、
知る希少な気持ち、世界がある。
その世界は常に、周りの影響を受けながら、
揺り動かされ続けているように思う。

そんな不安定な世界に、私は一人で生きている。
私は、ろう者でも難聴者でも中途失聴者でもない。

私だけは、皆と同じなのではない。
健聴者から見れば異常であり、しかも、
かなり特別な聴覚障害者なのだろう。

聞こえるようになることは、私にとって
永遠の憧れなのだろう。

けれども一方で、今さら聞こえるように
なったからといって、
喜べるようになるのだろうか、
という諦めの気持ちもある。

どんなに嫌がっても、聞こえない、
そして聞こえづらい耳は、
今までずっと自分の身体の一部だったのだ。
それが消えたからといって、自分の辛い過去も
同時に消え去るわけでもない。
また、それで自分が変われるというのだろうか。

そうして生きてきた自分の過去は、
もう決して変えられないのだ。
だから、その辛い過去を背負って
生きていくしかない。
また、その影響をこれからも受けずには
いられない。

私は職場では、健聴者の皆とチーム・ワークを
取るのが苦手で、そのために次第に、
自分に自信が持てなくなっていった。
だんだんと、状況が読めなくなってきた。

昔はそれほどではなかったのだが、
それゆえに結果的に、自分のなかではあまり、
主体性が育たなかったような気がする。

健聴者には、言い訳にしか聞こえないかもしれないが。

長年、聴覚障害者として生きてきたからだろうか。
今はもう、健聴者に合わせるのが、とにかく疲れた。
私はもう、脱落者、敗北者だ。
今にも劣等感に押しつぶされそうで、
たよりない自分がそこにいる。
そして

「自分は一体、何ものなんだろう?」

と思ったりする。

私は、自分の生きている意味が、
今でも全くわからない。
by bunbun6610 | 2012-08-04 22:36 | 聴覚障害者心理

ある障害者から見た世界


by bunbun6610