職場での、聴覚障害者とのコミュニケーション対策 ―健聴者の言い分

『職場での、聴覚障害者とのコミュニケーション対策
 ―健聴者の言い分』


以前、聴覚障害者を雇用している会社の
ハローワーク面接会に行ったことがあります。

ある会社の人事担当者の人と話す機会が
ありました。
私は質問させていただいたときに、

「貴社では聴覚障害者とは、どのような方法で
コミュニケーションをされているのですか?
私とは、どのような方法でするのでしょうか?」

と尋ねてみました。
すると次のような答えが返ってきました。

「周りの人があなたに何でも気にかけ、
コミュニケーション方法も考え、
面倒を見てくれ、と言うのですか?

それよりもあなたが、どうしたらいいのかを
言ってほしい。
あなたは今、それを言えますか?
言えないじゃないですか。

あなたが説明できないのに、私たち(健聴者)
に聞いても(その方法は)わからないに
決まっています。
だから、コミュニケーションの方法は
あなたが考えてお願いするのです。
そうすれば、私たちはその通りにしてみます。」


これは、私の質問に対する答えになっている
だろうか?

この会社は

「聴覚障害者を何人も雇っている」

と言う。
そこで、実際にどんなふうにコミュニケーション
方法を工夫しているのか、を私は質問して
いました。
そうしたら逆にこう言われたわけです。

本当のところは、この人も聴覚障害者の
配属部署では、どのようなコミュニケーション
方法がなされているのか、全く知らないから、
困ってこう言い出したのかもしれません。

あるいは、聴覚障害者とのコミュニケーション
の工夫なんて、ひょっとして特にないのかも
しれません。

それはともかく、確かにその人事担当者の
言うことは、理路整然としています。
聴覚障害者は、聴力状態や得意とする
コミュニケーション方法が一人ひとり異なる
わけですから、健聴者には分かりにくいのは
当然で、職場での実際のコミュニケーション
方法も聴覚障害者が考えて提案した方が
いいでしょう。

ところが、提案しても受け入れてもらった
ことがなかったら、健聴者にやり方を任せる
より他に、方法がありません。
今までずっとそうだったからこそ、
最近はどんな新しいコミュニケーション方法
があるのだろうか?
と興味津々でこの会社に質問したわけです。

ですから私にとっては、この答えには拍子抜け
してしまいました。
結局は、コミュニケーション方法も自分で積極的
に提案し、バリアは自分で取り除いていく努力を
するのが当然、ということでしょうか。

まだ会社として、組織的な聴覚障害者雇用への
取り組みを導入しているわけでなく、聴覚障害者
一人ひとりがそういうなかでコミュニケーションに
努力している現状なのかもしれません。

こんなやりとりがあったからと言って

「手話で話してほしい」

と考えてはいても、健聴者に手話を覚えて
もらうのは容易ではない。
この提案が無理ではないのだったら、
この問題はとっくに解決している。

現実には手話は、教えたからといって
誰でも覚えられるわけではない。
健聴者自らの、覚えようとする気持ちが
ないと、幾ら丁寧に教えたって覚えない。


→当ブログ

『健聴者の手話嫌い』〔2012-05-02 18:00〕

『健聴者の手話否定』〔2012-05-02 18:57〕


筆談も面倒がられる場合が多い。

では、他には?
一体、どうするか?

健聴者も自分たちで考えて欲しい。
そうしないと、問題解決への模索は進まないのだ。

手話が覚えられないのなら、自分たちで
覚えられるような、簡単なサインを考案し、
それを皆で使ってみて欲しい。

実際、手話にもスクール・サイン、
ホーム・サイン、ベビー・サインやシニア・サイン
など、いろいろな手話がある。
(ろう者〔Deaf〕の主張する、日本手話からは
外れてしまうが)

それなのだから、会社の中だけで使うサイン
があってもいいのではないか。
聴覚障害者の手話と違っていたって、
聴覚障害者は反対しないだろう。

ある大学の手話サークルでは、
通訳ボランティアのために、
その大学内で使う手話(スクール・サイン)
を考案して、使っているそうだ。
(ろう者と一緒に、でだが)

そんな活動を、企業もやるとよい。
社内手話講習会で、いやでも教えられた
手話など、ほとんどの健聴者はすぐ忘れて
しまうが、自分たちで考えた手話なら、
忘れないはずだ。

とにかく、まず協力しあうことが必要だし、
方法を一緒に考え、試行錯誤しながら
完成させていくにも、時間はかかるだろう。

聴覚障害者の側が一方的に考えた方法を
提案することはできても、健聴者がそれを
受け入れることは簡単ではないはずだし、
理解が難しい、と思う。
健聴者に聴覚障害のことをわかりやすく、
簡単に言っただけでは

「今度は誤解されてしまった」

という経験は、聴覚障害者にはたくさんある
のではないだろうか。



〔参考〕当ブログ

『「補聴器をすれば聞こえます」の誤解』
〔2012-04-06 18:46〕

『聴覚障害者の面接試験対策』
〔2012-03-07 20:38〕
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by bunbun6610 | 2012-05-05 18:27 | 就労後の聴覚障害者問題B
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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610
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