身体障害者への就労支援のあり方から

当ブログ
『精神障害者への就労支援のあり方から』(2012-02-13 22:05)

『第4回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会議事録』
(平成20年8月7日)
議題; 障害者関係団体からのヒアリング
より。

に続く、身体障害者側の意見です。

これも
社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 常務理事 森祐司氏の
お話は非常に長いので、一部抜粋させていただきました。

これまで通りに、私の思ったことも後に加筆しました。


○森委員
>「現行の雇用納付金を原資とする支給金制度は我々といたしましては、
合理的配慮の具体化ではないかと思っております。



 →支給金制度と合理的配慮を混同するかのような表現に思われますが、
合理的配慮は企業への支給金としてあるのでしょうか?
それとも、企業が合理的配慮をしやすくするため、その援助金としての
支給金制度なのでしょうか?

この点をもっとハッキリとすべきだと思います。



>「障害者権利条約の国内法整備に関しましては、障害者雇用促進法に
おいて現に実現されているものでありますが、合理的配慮の内容は
いろいろとその障害によって違うわけでありますし、また、
その時期によって多様化、変化してくると思いますので、そうした場合、
状況に即応した助成措置に改正し合理的配慮を実効のあるものにして
いくことで対応していくことがよいのではないか




 →「合理的配慮を実効のあるものにしていく」
ということは、現状はまだそれが不十分だと認めてよい、
ということになると思います。
こうなると、今の助成金のあり方にも当然、疑問が出てきます。

ハローワークの障害者対象求人票には「求人条件特記事項」
という欄があります。
そこによく<施設設備状況>というのが明記されています。

例えば、下のようにです。

「エレベーター:有     建物入口段差:無
 トイレ:洋式        建物内車椅子移動:不可」


私はこの意味については詳しくないのですが、
それでも「車椅子障害者には就労は難しい」と、
見てわかります。


ここを見ただけで、車椅子障害者は応募を諦める
のだろうと思います。
このバリアを失くしていくために、助成金があるのだと
考えるのが、普通ではないでしょうか。

ところが、ほとんどの企業の考え方はそうではないのです。
「障害者を雇ってやった、ご褒美だ」と思っているのです。

今の助成金制度に、合理的配慮への実効性は、
ほとんどありません。

差別的な文言を禁止するだけでは、差別は撤廃されません。
実効性のある障害者施策に変えていかなければならないのです。
それには助成金の使途を考えることも重要です。



>「雇用の場を提供する使用者といたしましては、やはり民間企業の
場合であれば、経営権というものがあり、株主への責務もあります。
…ある面においては、事業主の利益というものも考えないといけない
のだろうと思います。
また、反面、障害者が雇用されるために必要とする適切なる措置という
のは、やはり合理的配慮として掴まなければいけない。
従いまして、合理的配慮は、やはり使用者のまずは義務ではないだろうか
と思っております。



 →最終的には

「雇用する、またはしている障害者への合理的配慮は、
使用者の義務ではないか」

としています。
でないと、日本の障害者のほうが国連・障害者権利条約に
反してしまう、と思います。



>「合理的配慮の拒否そのものが差別として違法になるのか。
その拒否によって差別が生じ、その結果によって違法と捉えるのかという
ことでございます。
合理的配慮は、当該配慮を怠ることにより、結果として差別状態が生じる
と考えるべきではないだろうか。
拒否そのものは不作為である。従って、差別そのものと言わないのではない
だろうか。
あくまでも結果として差別状態をつくりだしたことに違法という意味ではない
だろうか




 →例えば私も当ブログで

「無知、無関心、無視による間接差別」

と言っていますが、これはすでに間接差別の状態がある、
と思っています。

そして、これに気がついても、あるいは障害者から指摘されてもなお、
そのまま放置することは、間接差別の状態が続いている、
ということだと思います。

このあたりの考え方が、森委員と私とでは、
少し違うのか、どうかよくわかりませんが。



合理的配慮は、当該配慮を怠ることにより、
結果として差別状態が生じると考えるべきではないだろうか。
拒否そのものは不作為である。
従って、差別そのものと言わないのではないだろうか。
あくまでも結果として差別状態をつくりだしたことに違法(である)


上をわかりやすく言い換えると、

(1)「合理的配慮がない」ことを「差別状態が生じる」と言う。

(2)「合理的配慮の拒否」は「不作為」である。

※「不作為」→法律で、あえて積極的な行為をしないこと。⇔作為。

※「不作為犯」→不作為によって構成される犯罪。
 多衆不解散罪・不退去罪や母親が乳児に授乳しないで餓死させる行為など。→作為犯

(3)「差別状態をつくりだすのが違法である」
    →「合理的配慮をしないこと、拒否すること」


「不作為」が「違法」だと解釈してよいということでしょうか。
では、「不作為の理由は問わないのか?」という疑問には、
どういう回答があるのだろうか?

例1)会社がろう者に「会社として、手話通訳は必要ないと判断しています。
(筆談します。)ですから、手話通訳は準備しません。」と言ったら?
 これは不作為の理由になるのでしょうか?

筆談は「合理的配慮」あるいは「正当な拒否理由」になるのでしょうか?


例2)会社が難聴者に「会社として、要約筆記通訳は必要ないと判断しています。
(筆談します。)ですから、要約筆記通訳は準備しません。」と言ったら?
 これは不作為の理由になるのでしょうか?


人間の「する」ことというのは、「作為」ですよね。
逆に、あえてしないことは「不作為」だというわけです。

しかし健聴者は、聴覚障害者の差別的状況を見ていても、
ほったらかしにしておく場合もよくあります。
これは「不作為」に該当するということなのでしょうか。


もっと調べたら「作為体験」という言葉も出てきました。
それは、こういう意味です。

●さくい‐たいけん【作為体験】
自分の考えや行動が、他人に操られていると感ずる体験。
統合失調症に特有の症状。させられ体験。

この体験は、聴覚障害者にもあります。
「しょうがない」と思わされる体験とかが、山ほどあります。

「自分の意志じゃないが、自分一人だけなのでしょうがない、
自分がガマンすれば解決する問題だから」

と思ってしまう心理のことです。
それが「作為体験」ではないでしょうか。


結局「差別とは、何か?」が、よくわからない人も
いるかもしれませんが、
行為として行う直接差別(いじめなど)に対し、
間接差別は「あえてしない」という性質の違いがあるが、
これも差別だということです。



>「違法の修復につきましては、障害者の職場定着推進チームというのがある
ようでございますが、それの権限等を強めて、合理的配慮に要する費用面の
問題についてはよく使用者と、また、障害者さらにとの第三者構成等を含めた
組織で、対処していくのがよろしいんではないか



 →「障害者の職場定着推進チーム」って、どこなのでしょうね?
人事部内の障害者担当者がリーダーなのでしょうか?
それとも、労働組合が取り組んでくれるとでも?
私の体験では、企業内の人に相談しても、無理だと思います。


>「差別禁止の対象となる障害の範囲でございますが、現行の障害者等級は医
学的ないしは機能的な観点から作成されております。




 →これは、全難聴が聴覚障害における認定基準に疑問を持っている
のと同様だと思います。
他の障害者から見ても、国の障害者認定基準に疑問を持っている
ということなのだと思います。
下の発言においても、医学モデルから社会モデルへの転換が議論
されているのだと思います。



>「我が国においては身体障害者福祉法の別表に拠っておりまして、
職場における職業能力に配慮した障害等級ではないのではないだろうか。
従って、そういう職業能力に応じた障害等級を創設する必要があるのでは
ないだろうか。








>「差別があるかないかの判断基準でございますが、裏返せば合理的配慮の
基準というのがあろうかと思っています。
やはり、それについては、企業の規模だとか、あるいは業種、あるいは従業員数
だとか、環境の特性だとか、障害者や企業の所属している地域の文化や慣習なども
参考にして判断すべきではないだろうか




 →合理的配慮の基準の問題とは、当ブログでも下の記事がありました。

 →『合理的配慮の実施が「可能な限り」では…』
   (2011-10-24 20:30)

森委員の上の話は、障害者への合理的配慮の質的確保についてではなく、
妥協案的な発言だと思います。(これは、言い過ぎかも?)



>「紛争のいわゆる処理委員会みたいなものがつくられるのではないかと
思っております。
また、つくらなければいけないのだろうと思います。
その時に、いわゆる国あるいは行政から独立した機関、第三者機関として
つくっていく必要があるのではないかと思っております。



 →合理的配慮に妥協案が入れば、それだけ紛争が増えるおそれも出てきます。
紛争解決の委員会を置くだけでなく、どうやって解決していくのかが、
非常に難しいところだと思います。


>「現在の雇用納付金は障害者を雇用する雇用事業に還元し、
利用に供することに基本的にはなっておりますが、もう少し
障害者雇用納付金の使途を広くして障害者就労移行支援等関係事業
に使える方法はないだろうかなという気がしております。



 →また説明するまでもありませんが、助成金制度への疑問点です。
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by bunbun6610 | 2012-02-27 21:44 | 就労後の聴覚障害者問題B


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