ろう者への就労支援のあり方から

当ブログ

『精神障害者への就労支援のあり方から』
〔2012-02-13 22:05〕


『第4回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会議事録』
(平成20年8月7日)
議題; 障害者関係団体からのヒアリング

より。

に続く、ろう者(聴覚障害者)側の意見です。

財団法人全日本ろうあ連盟 理事 松本 正志氏のお話も非常に長いので、
一部抜粋(青字部分)させていただきました。

これまで通りに、私の思ったことも後に加筆しました。


○松本氏

>「障害者権利条約の2条で手話は言語であると定義されています。
これは新しい概念です。
それに基づいて、障害者権利条約の21条の中に、

「手話の使用を承認し及び促進すること」

というふうに書いてあります。
つまり、障害者権利条約の理念を実現するために聴覚障害者は
手話などによる情報コミュニケーションを保障することによって、
社会に参加できるよう保障することが必要だということです。



→ろう者の権利である手話を保障する決め手は、
手話言語法を制定することだと思います。

 →当ブログ・カテゴリー『手話言語法』の記事を参照。

それだけでなく、(仮称)『情報・コミュニケーション法』や、

 →『『(仮称)情報・コミュニケーション法』って、何だ?』
(2011-04-27 21:43)参照。

それらの実施を義務付ける『障害者差別禁止法』(罰則の制定)が必要だと思います。

もしも、差別禁止法がなければ、努力義務規定に終わってしまうでしょう。
それが、差別禁止法が必要とされる理由なのですが、日本は法治国家で、
とにかく前例のない判決は出されにくいと言われています。

それが差別を法的措置にかけても、差別とまではみなされにくい性格を持っており、
よって裁判で勝訴するのが難しい。
弁護士も障害者側のこうした提訴は引き受けたがらない現実があります。

また、これから出てくるであろう、新たな障害者差別問題にも、障害者だけでなく、
社会常識や司法が、臨機応変かつ柔軟に対応できるようにするためには、
日本という国の性格と障害者の未来を考えるならば、差別禁止法が
必要だと思います。



>「障害者権利条約の中に、第4条の3項のところに、

「条約を実施するための法令や政策の策定・実施等について、
障害のある人の団体を通じて障害者と緊密に協議し、
積極的に関与させる」

と書いてあります。
それを考えると、障害当事者が参画できるように改めて、
連盟に対して委員を委嘱するよう要望したい



 →当事者を委員に選ぶこと。
これが障害者の委員会として重要だと思います。


>「聴覚障害者が働きやすい環境をつくるためには、
やはり障害者の種別、また、聴覚障害者の実雇用率の
データが必要だと考えています。
先ほど、日本盲人会連合の方が、障害種別毎の雇用率が必要だ
というようにおっしゃっていました。
これは何かといいますと、障害別の雇用率をきちんと押さえて、
何故この会社がたくさん雇っているのか。
何故、こちらの会社は聴覚障害者が少ないのかというような
分析をして、そして、職場の環境の改善の材料になるのではないか
と思います。
障害別のデータが必要だということです。



 →ある聴覚障害者から

「『聴覚障害者版会社四季報』みたいなものがあって、
それぞれの会社がどれだけ聴覚障害者施策に力を入れているのか、
わかるといいなー」

という話を聞いたことがあります。
そこまでは無理だとしても、
改善の力になるものが何か、必要だと思います。


>「現在、手話協力員というのは全国で297カ所の職業安定所に
設置されています。
これは全国全ての職業安定所に設置されているわけではありません。
また、手話協力員の身分が非常に悪い。
勤務時間が1カ月に7時間だけです。
これでは、とても聴覚障害者の労働分野におけるコミュニケーション
支援ができないという現状です。



→手話協力員の待遇が悪いということは、
協力員の健康、生活、さらには通訳・支援の質にも関わると思います。
これを放置するならば、受け手であるろう者にも、
質の悪いサービスとなって返ってきてしまう、と思います。


>「手話協力員は専門職です。
これは何かといいますと、聴覚障害者の障害特性を十分に
理解しているということで、職業安定所の担当者、また、
会社に対して情報を提供し、支援をすることができるということです。

それに、聴覚障害者と職業安定所担当者、また、会社側との
コミュニケーションの橋渡しをするという役割には大きなもの
があります。

聴覚障害者だから問題を起こすということではなくて、
聴覚障害者の個々のもっている知識、常識というのは、
千差万別あります。

手話協力員はそういう実態を知った上で、聴覚障害者と職業安定所の
担当者とのコミュニケーションを解決する方向に導くというために
必要な知識、スキルを身に付けることが必要です。






>「ろうあ者だから筆談でやりとりしたらいいではないかと
思われるかも知れませんが、筆談ではなかなか理解できない部分
が多々あります。
やはり手話でコミュニケーションする、手話でコミュニケーション
できる環境という条件が必要になります。



→ろう者の場合、手話と筆談とでは、大きな差になっていると思います。
その不利をあえて飲んでまで、ガマンして譲歩しているろう者がかなります。
それが健聴者にはわかっていないようです。


>「募集の時に、電話ができますかというふうに載っているのが
多いということでした。
実際に事務職の募集があって、ろうあ者が、事務職の募集があって、
これがいいと思って実際に出かけていくと、あなたは電話ができますかと
聞かれます。
そして、できないと言うと、断られるという例が多いです。
ですから、本当に事務職は電話が百パーセント必要なのかという
疑問があります。



 →これは、書類選考の応募時には電話応対のことは伝えず、
面接段階になってから電話応対の確認を取って落とす、
ケースが昔は多かったそうです。
ですから、今ではほとんどの求人票に電話応対について、
会社の応募条件が明記されてきています。

また、どうしても電話応対もしてほしい事務職員を募集している
会社も確かにあり、その場合に「電話応対必須」と明記するのは
仕方ないのですが、そうでもないのに電話応対を理由に挙げて
ネックにしてしまう会社もあるようです。
これは、もしかすると会社側に全面的な責任があるのではなく、
ハローワークの創意工夫が足らないことも原因ではないか、
と考えられますが。

 →当ブログ『聴覚障害者が応募できない職種を減らそうではないか』
        (2012-02-18 07:59)参照。



>「欠格条項と聴覚障害者の関係ですけれども、皆様ご存知のように2001年、
医師法を始めとする絶対的欠格事由、「聞こえない者に免許を与えない」という
条文が削除されました。
ただ、相対的な欠格条項は前のままです。
ここの文章は、「心身の障害により該当する業務を適性に行うことができないもの」
に、厚生労働省令によって免許を与えないというふうに書いてありますが、
その業務を遂行できない程度というのが非常に曖昧だと思います。
障害者の権利保障に合った科学的な、具体的な内容を明文化されて
いないと思います。
そういう意味で、相対的欠格条項を全て撤廃して欲しいと思っています。



 →聴覚障害者は「なれません」(資格を与えることができません)
という絶対的欠格事由が外されましたが、細かな条文に引っかかって、
そのために資格が与えられない、などの事例がまだあるのかもしれません。

よくわかりませんけれども、曖昧にしている部分があり、場合によっては
極端な俗人的判断で資格を与えられなかった、という事例があるのかも
しれません。

そういう事例があるのだとすれば、(財)全日本ろうあ連盟側も、
具体的事例を出して撤廃・禁止へとアピールしてほしい、と思います。




>「聴覚障害者は資格を取得する時、または専門的な就労に当たっては、
情報コミュニケーション保障がまだ弱い部分があります。



→情報・コミュニケーション法が完全実施されなかったら、
聴覚障害者にとっては、相当な壁になると思います。


>「職場における合理的配慮です。就労の場面では、全難聴と盲人会連合
の方からの報告がありましたけれども、コミュニケーションの問題です。
ろうあ者の場合、特に多いのが、上司の指示がうまく伝わらないという
ことです。
筆談では上司の指示を十分に確認することができません。
また、朝礼、会議などの内容が分からない。

例えば、朝礼ですけれども、朝礼で聞こえない人がいる時に、
配慮しますといっても、それは朝礼が終わった後に、書いたメモを渡されます。
でも、この書いたものを見ると、簡単にまとめられているだけです。
これでは、聴覚障害者として自分がこれが大事だとか、これは必要ないという
判断が自分でできません。



→自発的な判断力が身につかない、と思います。
これはもしかして、多くの聴覚障害者に、軽度の発達障害として
結びついてしまうのかもしれません。
うつ病など精神障害(病気)の原因にもなりやすいのではないか、
と思います。


>「業務上のミスが重なって、ストレスが大きくなって、
退職をしてしまうという例が多くあります。
そういう意味で、聴覚障害者のための合理的な配慮というのは、
情報コミュニケーション保障というものが、必要な時に手話通訳を
つけるということ。
例えば、公的機関、民間という別なく、聴覚障害者が実用的に必要な時に、
専門的な手話通訳を配置できるような整備が必要だということです。



 →私も経験しています。
このミスの原因は、会社の配慮不足が原因なのですが、
周りの人は聴覚障害というものを知らないので、
自己責任にされてしまう場合が、よくありました。

聴覚障害者責任にされるのは

「少しは聴こえているのだろう」

という、健聴者の勝手な思い込みが原因ではないか、
と推測していますが。

失敗事例の詳細は、下の記事欄に書いていました。

 →『職場の問題事例をコンプライアンス部に告発(1)(2)(3)(4)』
(2011年記事)
その他。



>「現在、私たちが利用している制度は、障害者介助等助成金制度の
手話通訳の委嘱制度です。
しかし、これは課題であります。
1つは会社が自由にどこかへお願いをして、派遣をしてもらうのではなく、
前もって申請をしなくてはなりません。
この手続きがとても煩雑で面倒です。

 2つ目は、この財源が納付金制度に基づいているということです。
そのために、公的機関が使うことができません。
例えば、地方公務員が会議で利用したくても、通訳が利用できないという
例がたくさんあります。
また、利用回数に制限があります。
1年間に288,000円までで、支給期間は10年間という制限があります。
でも、私たちは働くといったら、最低でも30年はかかりますね。
その中の10年間しか使えないとすると、あとの20年間はどうするのか。
聞こえなかったら、我慢してくださいという意味になります。



→助成金でまかなう方法の2つの限界は、考えてもいませんでした。
もともと、何の情報保障も、今までほとんどなかったのですから。

もう一点あります。
全難聴の高岡氏の話でもありましたが、
助成金は、ちゃんとした目的のために用意されたお金なのですから、
それに沿った遣い方をするようにしてほしい。
飲み代や自転車操業の運転資金に遣うなどは、もってのほかだと思います。

 →当ブログ『障害者雇用助成金を飲み代に遣ってしまう会社』(2012-02-21 20:05)参照。

 →当ブログ『障害者を使い捨て雇用する企業の特徴』(2012-02-21 20:25)参照。



>「国の制度でジョブコーチという制度がありますけれども、
手話通訳または手話でコミュニケーションができるジョブコーチは
ほとんどいません。
やはり聴覚障害者の専門の支援体制の整備のために、先ほど言いました
ように、重度聴覚障害者ワークライフ支援事業の全国的な実施が必要
ではないかと考えます。



 →東京には手話もできるジョブコーチ員がいますが、ほんの少しです。
ろう者のスキルを上げていくには、全然足りない人数です。
国のこれまでの施策が、社会資源の有効利用を偏らせてきた一因になった、
と思います。
超恩恵型障害者福祉施策が、結局は国も障害者もダメにしたのだと思います。
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by bunbun6610 | 2012-02-23 20:40 | 就労後の聴覚障害者問題B


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