聴覚障害者が応募できない職種を減らそうではないか

『障害者の経済学と障害者雇用促進』
 ―私のハローワーク改革案 求人票の工夫(聴覚障害者雇用促進について)―

『障害者の経済学』(中嶋隆信/著)では、

「筆者の能力不足から視覚障害と聴覚障害については
詳しい分析を行っていない。
その点をあらかじめご容赦願いたい」(P6)

とあります。

全体を読みましたところ、内容にはやはり、
聴覚障害については書かれていませんでした。

そこで、勿論私見でありますが、
いわゆるこの『聴覚障害者版経済学』を
書いてみることにしたのです。


ある日私は、会社の障害者雇用を進めるはずの人事部の部長にまで

「障害者とのコミュニケーションは難しい」

と言われてしまいした。

なぜ難しいのかと聞くと

「障害者を100%理解していないから」

と、あまりに億劫な返答でした。

障害者をもう何年も雇っているのに、
これでは残念に思うのが当たり前です。

「道理で、この会社の聴覚障害者理解は進まないのだな」

と思いました。

障害(者)を理解することとは、
どういうことだろうか。

障害者により、障害の詳しい状況、
対処法などは異なります。

聴覚障害者に関しては

「障害の個人差があり、
そのために対処法も個別性が高い」

ということが言える、と思います。

そこで、その人の障害についての詳細な知識、
情報ももちろん必要です。

障害を放置することが、障害者本人にだけでなく、
会社にとってはマイナスなのです。
逆に障害を放置せず、克服していくことは、
双方にとってプラスになるのです。

そのためには、障害者本人と
遅くにならないうちにコミュニケーションを
はじめることも必要です。

「まず、本や講習会などから知識を得ることが
重要」

なのはではない、のです。



ところで、ハローワークでの求人票を見て、
気がつくことがあります。

聴覚障害者の求職活動で大変なのは、
最初の段階、つまり求人票探しからあります。

「聴覚障害者OK」と明記された求人票は
絶対に見つかりません。

逆に

「電話応対必須」 「電話応対あり」 「接客業務」

などと明記されている職種だと、
ハローワークは紹介してくれません。

あるいは、聴覚障害者に応募できそうな求人票でも、
ろう者にはニュアンスがわかりにくい、
曖昧な意味の言葉で書かれているものが多いです。

ハローワーク求人票の書式を見て思ったのですが、
なぜ「電話応対なし」とか「電話応対は考慮します」
という欄がないのだろうか。

もしあったら、聴覚障害者の雇用促進は
もっとよくなる可能性だってあると思います。

理由は、もしその欄があれば、企業はそこに
チェックを入れるだけなので簡単だし、
それにチェックが入っていることにより、
聴覚障害の求職者もすぐに関心を持つからです。

今の求人票は応募できるものが非常に少ない、
という点が疑問だし、それらを読む手間も、
あまりにもかかりすぎるように思います。

そうした点を改善すると、聴覚障害者が応募しやすく
なることは明らかです。

それだけでなく、見えない聴覚障害には
何を配慮すればよいのかも、
企業はもっと気づきやすくなるのではないでしょうか。

(求人のときに、気づくべきことに気づいているか、
という問題が減るのでは?)

現状は手書きしなければなりませんので、
それが書かれないだけで、聴覚障害者は
その求人票は読み飛ばします。
なぜなら、職域差別があることを、
聴覚障害者は皆、知っているからなのです。

だから、時間のかかる、大量の求人票から探すときは、
職種を見ただけで応募可否を判断せざるをえません。

たとえ

「聞いてみれば、もしかしたら応募できるかもしれない」

としても、落ちる確率が高いとわかっている
職種に応募を続ける余裕はありません。
効率が悪い就職活動はやっていられないものです。

しかし、もし、そういった簡単な欄があるなどの
対策があれば、それは企業側が積極的に
聴覚障害者も雇用対象としたい、
という意味を持ち、聴覚障害者ももっと
就職意欲を持つはずです。

ところが公共事業は鈍感なもので、
企業と求職者を「つなぐ」のが
下手なのではないでしょうか。

ほとんどの求人票が、聴覚障害者は
応募できるのかどうかさえ、わからないので、
仕事を探すときは結局、
自分の先入観、というより過去の経験からですが、
それだけで応募可否を判断してしまいます。

非常に効率が悪い就職活動になっている、
といえるでしょう。

企業側が聴覚障害者に見てもらうことも想定し、
積極的に
「聴覚障害者も雇用対象としたい」
という意思を持ち、手書きで書き込まない限りは、
聴覚障害者はそれに気づくのも難しい。

たとえ聴覚障害者が興味を持ったとしても、
職員に紹介依頼すると

「(対人だからとか、危ないからだとか、という理由で)
ダメだろう」

と一方的判断で紹介を断られるケースもあります。

だから、これも健聴者が聴覚障害者につくっている
バリアだと私は思います。

聴覚障害者が応募したいと言っても、
ハローワークで断られるケースが、かなりあります。
ホテル客室清掃の仕事でも

「お客さんと会ってコミュニケーションを
しなければならないかもしれないから無理です」

と言われたりします。

また、現状の求人票では、電話応対がどうなっているかが、
ハローワーク職員の側からは紹介できるかどうか、
また聴覚障害者側からは応募するかどうかを、
決める目安になっています。

以下が、実例です。

(左)企業側の記載例  → (右)ハローワーク職員の判断(ただし、個人差はある)

(1)「電話応対はありません」 → 紹介許可。

(2)「電話応対は特に必要ありません」 → 紹介許可。

(3)「電話応対必須」 →紹介不可。

(4)「電話応対できれば尚可」 →実際には紹介できないケースも。他にできる、よほどの才能でも持っている聴覚障害者ならば例外になることも。

(5)「電話応対については、相談に応じます」 →電話確認した後なら、紹介はする。

(6)「電話応対は、可能な方のみお願いします」 →紹介はする。

(7)「電話応対については、障害により考慮します」 →電話確認した後なら、紹介はする。
   ただし、会社も応募は受けつけるが、採用となると、なかなか難しいようです。

(8)「電話応対については、相談可」 →電話確認した後、紹介はする。

(9)「電話応対は、障害の状況に応じて相談いたします」 →電話確認した後、紹介はする。

【電話以外でも】
(10)「接客応対あり」 と書いてあると → 紹介不可

(11)「来客応対(お茶出しなど)」と書いてあると → 紹介不可 


仕事が多い東京都内でも「電話応対はありません」と
明記されている求人票がみつかることは、ごく稀なので、
聴覚障害者が応募できる職種はかなり狭められてしまいます。


障害者の募集職種には、電話応対が付随する雑務が非常に多いのが特徴。
これは、事務系に限らず、作業系にも見られている。
(例)店番や事務兼務の作業職で、電話を取る場合もある仕事など。



※ ハローワークの障害者向け求人票を見ると、
「求人条件特記事項」という欄があります。
ここには、車椅子障害者などへのバリアフリー状況
が書いていある求人票も、よくみられます。

しかし、聴覚障害者へのバリアフリー状況が書いてある
求人票は、全くと言っていいほど見当たりません。

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by bunbun6610 | 2012-02-18 07:59 | 就労前の聴覚障害者問題A
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ある聴覚障害者から見た世界


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