聴覚障害者への就労前・後における合理的配慮とは? (1)

国連・障害者権利条約は、
障害者への「合理的配慮」の必要性を告げていますが、
それは具体的にどういうことが必要とされているのか、
まだハッキリと決められていません。

考えがハッキリしても、さらに、
その実現への法制度整備が必要になってくると思います。

障害者がこれらへ積極的に関わってゆき、
先進国らしい取り組みが示されるようにしたいものです。

これから述べることは、私の考えに過ぎませんが、
こうあって欲しい、と思っています。
私の今までの経験から言えば、
会社が考える聴覚障害者に対する合理的配慮は、
理論上は次の2つのうちのどちらかがあっても、
実際には(2)になりやすい、と思っています。

これが是正されないと、多くの聴覚障害者は国連・障害者権利条約に
失望してしまうと思います。

 (1)合理的配慮(平等な取扱い)※
   
 (2)非合理的配慮(差別的取扱い)※

※ なお、私個人の考えでは、(1)を「積極的合理的配慮」とも
呼ぶことにしています。

反対に(2)は別名「消極的合理的配慮」とも呼ぶことにしています。
これは、後に詳しく説明するつもりですが、例えば、
聴覚障害があるからといって、単純労働しか行わせないことなどです。


電話ができないために、電話番もしなければならない担当から配置転換させることや、
電話番を除いた担当業務にすることは合理的配慮だと考えられますが、
行き過ぎた消極的配慮はかえって差別になりうる、と考えているわけです。

(3)さらに、合理的配慮の否定には、次の2つがあると考えています。

  ①合理的配慮の合理的否定
   合理的配慮をすべき者が、実際は合理的理由から、
   その配慮ができないことを表明すること。

  ②合理的配慮の非合理的否定
   合理的配慮をすべき者が、実際は非合理的理由から、
   その配慮ができないことを表明すること。

「実際は」を、誰が、どんな方法で判断すべきなのかが、
難しいところです。
本当に「その合理的配慮は不可能なのか?」を、
誰が公正に判断できるのだろうか?

あるいは、合理的配慮に妥協があるとすれば、
その妥協点は果たして妥当なのか?

こういったことの公正な判断は難しい。

例えば、会社では手話や要約筆記通訳の費用を負担するのが難しいとか、
守秘義務に心配があるからとか、講演者の許可を得るのが難しいとか、
いろいろな理由をつけられて、通訳がつけられない場合があります。

それを「合理的理由がある」あるいは「非合理的理由に過ぎない」と
判断するのは誰が、また何を基準にして判断がなされるのかが、
難しいところです。

上のことは当ブログ

『合理的配慮の実施が「可能な限り」では…』
(2011-10-24 20:30)


を思い出されますと、理解しやすくなるのではないか、
と思います。


会社が、聴覚障害者に、聴覚障害があることを理由に、
応募して来る聴覚障害者の全てを不採用にしてしまう、
ということは聴覚障害者差別になる可能性があります。

このように、聴覚障害者の就労問題には、大きく分けて2つあります。
就労前の問題と就労後の問題です。

就労前の問題とは、やはり今も一番問題になっているのは、
ろう者の就職困難です。
実際は電話応対など必ずしもしなくてもいい職務内容なのに、
求人票に「電話応対必須」と明記して、聴覚障害者を全く受け付けない、
採用しない企業もあるようです。

難聴者は難聴を隠して応募し、就職している人もいるようです。
しかし、ろう者にはできません。

私も就活のとき応募した会社の人に

「耳が聞こえないのに話せる人もいるのか」

と言われ、相手にされなかった経験があります。
おそらく、信用されなかったのだろうと思います。

健聴者の、聴覚障害者に関する無知が招いたことなのに。

言い捨てにそんなことを言われて、こちらの悔しい気持ちなど、
相手の健聴者には全く分かりません。

今の会社の、若い人事担当者は本当に困ったものです。

また、採用はしても、聴覚障害を理由に単純労働しかさせない、
などの格差をつけることは差別、非合理的配慮の可能性があります。


明らかに聴覚障害者に対する職域差別だ、と判断できる事例があります。

都内の、世界的にも有名な五ツ星ホテルの事例です。

Aさんは片足が不自由で、重いものを持ったり、
速く動くことはできませんが、それ以外には問題がない身体障害者です。
調理の仕事経験はありませんが、調理職に採用され、
障害者のなかでは最高給で働いていました。

Bさんは重度身体障害者で、音声コミュニケーションは不可能ですが、
調理師免許を持ち、調理職5年、製菓経験も9年あり、
コンクール入賞歴もある、飲食業界のキャリアを持つ人です。

Cさんは、人工透析を受けている身体障害者で、
勤務日・時間に制約はありましたが、
それ以外には健常者と同じように働けました。
ただこの人も、調理職の経験は全くありませんでした。

さて、ここまで読まれて、あなたが仮に人事の採用担当者であり、
調理職の障害者雇用を考えていたら、
このなかで誰を採用しようと思いますか?

実際にこのホテルが調理職に実雇用したのは、
AさんとCさんでした。

Bさんも調理場での豊富な経験を買われて採用されたのですが、
Bさんの配属先は洗い場でした。

Bさんが調理場の経験が豊富なのに、調理スタッフは無理、
と判断されたのは、おそらくチームワーク(音声コミュニケーション)に難がある、
と判断されたからだと思います。

もちろん、すべての会社が、こういう考え方である、とは言い切れません。
それは、当ブログ

『聴覚障害者の転職率が高い理由』(2011-05-28 20:00)

を参照して下さい。
しかし「職場には聴覚障害者差別があるのが現実」という
会社は非常に多いものです。

聴覚障害者だと告げると、ほとんどの場合、応募しようとしても、
門前払い同然にされてしまうのですから。

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【参考資料】 『雇用差別に重い罰金刑(米)』

 →http://www.challenged-info.com/news_qbtPGx2Va.html


★障害者側勝訴
障害者差別によって雇用に関する不法行為があったとして
訴えられていたスターバックスに、8万ドルの支払いが命じられた。

the U.S. Equal Employment Opportunity Commission (EEOC)
によると、チャック・ハネイ氏はスターバックスの求人に応募したが、
多発性硬化症を理由に採用されなかったという。
ハネイ氏は同店のバリスタとして応募したが、面接の連絡すら受けなかったという。
そして、ハネイ氏よりも経験が浅く、実力も低い者が採用された。

★平等雇用に対する認識を
これは明らかに米の障害者法に違反していると裁判所が判決を下し、
またスターバックスの店長・副店長クラスは障害者に対する認識
および雇用法を教育する旨を伝えた。



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by bunbun6610 | 2011-11-29 22:33 | 国連・障害者権利条約
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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610
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