感音性難聴障害を、健聴者や、ろう者にどう説明するか


難聴の種類には、その性質から大きく分けて、次の3つがあると言われています。

 ①伝音性   ②感音性   ③混合性(①と②の混合障害)


しかし、難聴にはもっといろいろな言われ方もあります。
私が実際に難聴者と会って、聞いたことがあるのは、
例えば次のようなものです。

 ①奇形性難聴  ②進行性難聴  ③突発性難聴  ④過敏性難聴  ⑤その他

これらは、難聴になった原因についてわかる名称のように思えます。


感音性難聴障害という言葉を聞いても、健聴者にはよく分からないでしょう。
それが当たり前なのです。
しかし、それだからといって難聴者が諦めてしまうのはおかしい、と思います。
諦めなければならない理由などはありません。

それでは、どうやって健聴者を説得するか。

例えば、今までには日本障害者雇用促進協会の
『聴覚障害者の職場定着推進マニュアル』
がありました。

http://www.jeed.or.jp/data/disability/occupation/list.html

このマニュアルの6ページには、聴覚障害を経験できない健聴者にわかりやすく
説明するため、見えない音声言語に対する、聴こえの状態を可視化しています。

アルファベットの文字「HANASHI」がハッキリと見える状態が、健聴者の耳の
聴こえの具合です。

一方、難聴者の場合は例えば、薄くぼやけていたり、一部か半分、あるいは
ほとんどが欠損していて読みづらい状態で、聴こえの不具合があるということを
説明しています。

「全ろう」では、通常は全く何も見えない状態、と考えていいと思います。

しかし、この例では、「聴覚障害」というものを健聴者にも理解できる、とは
言えないかもしれません。

その例では「HANASHI」は、どのように変質していても、この程度ならば、
自分がそれまで学習してきた言葉の知識でわかるようなものだからです。

難聴者も、「HANASHI」は聞いたことがあるので、その文字の一部や半分が
欠けていても、すぐ「はなし」「話し」だろうと推測で当てることが可能です。

以前に聞いたことがある言葉で、それを覚えているならば、言葉の一部を
ヒントに、それが何という言葉なのか、相手が何て言っているのか、
意味だけでも想像で当てることは可能です。

それだけではありません。
難聴者の場合は、優れた文章力を持つ人も多いので、言葉の幾つかを
聞き漏らしても、文脈全体から何と言っていたか、意味を当てることは
可能です。

それは完全に聴こえているからではなくて、実は、人々がよく

「あなたは勘がいい」

ということと同じなのです。
実際、特に先天性聴覚障害者の場合は聴こえが不自由であるのを補うため、
勘が良い人が多いものです。

こうしたことでも、健聴者はかなり誤解しているので、難聴者を「聴こえない人」
とは思わなかったり、それほど深刻な聴覚障害だとは思わないのです。

ですが、健聴者にこう思われたら、聴覚障害者の方は、その障害について
理解してもらうのは難しくなります。

私は、このマニュアルの説明だけでは不十分なのではないか、と思っています。
では、どうすればいいか。

それにはまず、健聴者やろう者(ろう者も難聴を理解できない人が多い)を、
「聴こえる(ホワイト)」「聴こえない(ブラック)」の二元論的思考から脱却させ
なければなりません。

難聴者には、それらの他に「曖昧に聴こえる(グレー・ゾーン)」も加えた3つの
聴覚状態があると説明しなければなりません。

グレー・ゾ-ンのなかにある「音」には、数種類のものがあります。
音としては聴こえるが、聞き取れない言葉、不明音のさまざまなものが
含まれています。

そして難聴者は聴く環境、相手の話し方などによって、絶えず3つの聴覚世界を
強制移動させられている、ということを理解してもらうしかありません。

難聴者は、補聴器などによって、その強制移動を少しでも減らし、聴こえる世界
に自分を安定させることは可能ですが、それを自分の力で完璧にコントロール
することはできない、といことも理解してもらいます。

(ホワイト、ブラック、そしてグレー・ゾーンの割合は、個人差があり、
また補聴器の性能、調整や、使用環境などによっても、常に変動しています)

「曖昧に聴こえる」というのは、私の場合は感音性難聴が原因なので、
聴神経の一部が健康な状態ではなく、損傷しているから、聴こえに不具合が
生じている、と説明するしかない、と思います。

あくまでも、私の持っている知識の範囲ではありますが。

その次に「曖昧に聴こえる状態」を可視化して説明します。
マニュアルと同じ方法ですが、少し変えてみました。

それでは健聴者のみなさん(が、難聴者の立場になって、仮体験してもらいます)、
下の所には何か書かれていますね。
見えますか?(これが聴覚検査では「聴こえますか?」の意味)

「あ●ケLのt△mA」 (見える=聴こえる状態、と仮定)

「はい」(難聴者=あなた)

「何と書いてあるか、言ってみて下さい」(「今、何て言われたか、言い返してみて下さい」)

「え? と…わかりません」(難聴者=あなた)

「でも、ちゃんと見えますよね?
何で私が言っていること(書いてあること)がわからないのでしょうか?」

「書いてある(言っている)ことはわかるのですが、
何て書いてある(言っている)のかまでは、
わからない(言えない)のです」(難聴者=あなた)

「え? わたしが「あ●ケLのt△mA」(実は「ありがとう」)
と書いているのに、どうして読めないのでしょうね?」

「・・・・・・。」(難聴者=あなた)

(難聴者は音は聴こえていても、それを頭の中でも日本語に変換できないと、
言い返せなくなります。
難聴者にはハッキリとした日本語として聴こえていないから

こういうことなのです。
これが、難聴者がしばしば聴いている、グレー・ゾーンの音声世界なのです。

後ろ向きになって(口も読み取れないようにするため)、
想像すら不可能な言葉を語りかけて(推測できないようにするため)、
それから「今、何て言われたのか、言い返してみてよ」と言えば、
優れた文章力を持つ難聴者でも正確に答えられないでしょう。
その途端、その人は難聴だと明らかになります。

上の難聴者の気分になってみて、あなたはどう思いましたか?
「何て、意地悪なんだ」とか「どうしてわかってくれないのか」と思わないでしょうか?

私はわからなくても言ってみたところ、今までに随分、他人から
「全然違う」と言われ、笑われています。
それで子どもの頃は馬鹿にされたので、無口になってしまいました。

周囲の人から、こういう無理解な接し方を繰り返されると、難聴者は難聴者心理へと
変化していく、というわけです。

自分の障害について、説明の方法が見つからないと、自分は正しいんだ、
という自信が持てなくなり、自己喪失の過程へ吸い込まれていくのです。

実際はもっと複雑だと思います。
心理は見えないのですから、どのように侵されているのかも、自分でもわかりにくい
のだと思います。

難聴は、自分でコントロールできません。
健聴者は、たいていは自分で聴こえをコントロールできるかもしれません。
ホワイトかブラックのどちらかで、音声会話でグレー・ゾーンを経験することは、
あまりないかもしれません。
しかし、難聴では、語音明瞭度が低い難聴者ほど、グレー・ゾーンに支配され
ている割合が高いです。

 →http://www.jrps.org/aiyakai/local/back/2005summer/07.html

 →http://suuchan.net/note/Chapter-042306.html

ろう者は、手話(視覚言語)が母語になっているので、手話でコミュニケーションが
できる場合、補聴器は不要だし、していたとしても、補聴器で聴こえようが
聴こえまいが、関係ありません。
手話だけで理解できてしまいます。

しかし手話もわからない難聴者には、不確実な補聴器でガマンしている場合が
多くなるのでしょう。
これは間違いなく、社会参加に悪影響を及ぼしています。

難聴者は、健聴者とも、ろう者とも違う、聴覚も心理も全く異なる世界のなかで
生きているのです。

「同じ“聴覚障害者”なのだから、似ている」

と思い込むのも、誤りだと思ったほうがいいでしょう。

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by bunbun6610 | 2011-07-23 00:10 | 難聴・中途失聴


ある聴覚障害者から見た世界


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