シナジー効果がもたらすもの

このカテゴリー(『障害者の経済学』)では、障害者福祉や障害年金制度を、経済学の視点
からの見解としてであって、総合的視点とは異なります。
したがって、これが正しい、という主張で述べているわけではないということを、ご了承下さい。

『障害者の経済学』(中島隆信・著)には、「タダの福祉ほど高くついてしまうものはない」という
見方もあります。
これはどうでしょうか。

これも経済学の視点から見ると、確かにその通りだと思います。
しかし、その前に障害者には低所得者が多く、自分の生活に必要不可欠な福祉サービスに、
その利用料がついたら払えなくて利用できなくなる、という方もたくさんいます。
ですから、問題解決には障害者の所得の底上げであり、そのために可能な限り
労働力としても活かし、所得から福祉サービスの利用料も自分で払えるように、
バランスを取る必要があります。
障害者の所得を引き上げるとともに、所得に応じて負担割合を決め、有料にします。

有料化には障害者団体の反対は強いと思います。
しかし、実は有料化は障害者にとっても、障害者を支える人、あるいは障害者と関係が
ないと思われがちな人々にとっても、悪い面ばかりではないと私は思います。

例えば、聴覚障害者が使うコミュニケーション支援事業の手話・要約筆記通訳は、
利用時間に制限はあるものの、原則無料となっています。
(支援法では原則、障害者も1割負担となっていますが、東京の実態は無料という
ところが多いようです)

病院では時間無制限で利用でき、利用料も無料です。
それをいいことに、ある病院では予約制にもかかわらず、通訳時間も実際は
10~15分足らずであっても、待ち時間に何時間も要しています。

「それを公費負担にさせているのはおかしい。
病院は改善して」

と要望しても、平然と無視している場合がほとんどです。
公費負担だから、病院は痛くも痒くもなく、病院側は何とかしようとは思わないわけです。
まさに「タダほど高くつくものはない」です。

こういう姿勢は、聴覚障害者が働いている職場(企業)でも同じです。
いや、たとえ聴覚障害者がお客様の立場でいられる商業施設であっても、
企業全体に同様の実態があると言えることでしょう。


他にも、利用者の立場から、通訳技術に不満があっても、無料だからと文句を言いにくい
場合があったり、通訳者の方もなかには「どうせあなたはタダなんでしょ」と僭越な態度を
とる人もいるかもしれません。

両者の関係がそういうふうでは、サービスの質的向上も、なかなか進まなくなってしまう
のではないでしょうか。

通訳は技術が問われるものです。
それにもかかわらず、通訳者のなかには、あまり真剣に努力しないというか、
プロ意識が育ちにくいのではないか、という感じもします。

障害者も、自分で働いて得たお金を払うんだったら、遠慮なく、厳しい意見も出したい
ときもあるでしょう。
それが当たり前であるべきで、通訳者もそれに応えることで、通訳者も技能を伸ばし、
障害者も会社での戦力として成長することが可能になるはずです。
こうしたことから生まれる効果は、今までの福祉よりもずっと、社会全体にプラス効果をもたらす、
と思われます。

通訳技術が向上し、労働の場にも一定の通訳が利用できるようになれば、利用者は確実に
増えると思われます。
そうすれば通訳者も通訳業だけでメシが食えるようになります。

そのように社会全体の底上げのためには、やはり障害年金や無料福祉に依存するシステム
ではなく、障害者自身の所得を上げ、障害者の社会進出を促す方策が、理想的だと言えそうです。

そのためには、日本も障害者差別禁止法(JDA)をつくり、障害者に対する合理的配慮を
認めない、行わない企業に対して、罰則を強化する必要があると思います。

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by bunbun6610 | 2011-07-21 20:25 | 障害者の経済学
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ある聴覚障害者から見た世界


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