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「障害者が通訳者の分も負担しなければ ならない」のか? 森美術館の事例


国が決めたことに反する事例(旧題名;『森美術館の事例』2020年5月27日加筆)


当ブログ

『自分の交渉力、説得力を磨こう』
(2011-06-30 22:27)

で聴覚障害者が社会見学ツアーに参加し、
自分の通訳者を同伴させる場合、
主催者側の判断は

「通訳者の分も参加費を払う必要がある」

という回答でした。

過去にも、これと同じ回答例が、
六本木ヒルズ森美術館でありました。
今回は、それについて話します。


≪1.入館料は、通訳者の分も聴覚障害者が払うことについての疑問≫
聴覚障害者の場合、通訳者は介助者の立場に相当する手話
(または要約筆記)通訳を行うために来ている人です。
ですから聴覚障害者の立場から言えば

「何で障害者が通訳者の分も負担しなければ
ならないのかな?」

「国の無料派遣なのに、通訳者の入館料まで
必要なのはなぜ?」

という疑問が生じてきます。
もしこうなるのなら、聴覚障害者は諦めるでしょう。


≪2.そもそも…聴覚障害者に付き添う「介助者」の意味とは何か? ―その見解の相違≫
極端な話ですが、森美術館でも、
介助犬は無料で入館できます。
視覚障害者の障害の除去に必要な介助犬は
無料が認められています。

一方、聴覚障害者の通訳者という場合なら、
有料のカルチャー・スクール、講演会などであっても、
通訳者は無料で入ることが認められています。

しかし、森美術館の場合は、人間である手話通訳者
の場合、同じ介助(でいいのか? どう言えばいいのか
悩ましいところですが)という目的でとはいえ、
半額負担に変わってしまいます。

実は、開業当初は森美術館だけの入館なら
障害者手帳提示で介助者も無料でした。

しかし、展望室、スカイデッキも併せた3つの入館券に
変更してから、セット料金として障害者からも半額
いただくことに変わった、という説明でした。

そして、通訳者が同行する場合は、その入館券も
買わなければならないシステムに変更したため、
障害者がそのお金を払うことになった、
という説明でした。

要するに

「美術館を運営している森ビル側の都合で料金システム
がこうなった」

ということです。
これには納得できるような、できないような、
微妙さは残りますね。

国の法律によって実施されている無料派遣で、
コミュニケーション支援のために同行している
介助者にお金がかかるということには、
どうも疑問があるのではないだろうか?
と思います。

企業側はまず、通訳者は障害者と一緒に遊びに来た
のとはまるっきり違う、ということを理解して欲しいと
思います。

一方、森美術館側としては

「これは通訳者として同行されているのか、
それともお客様として聴覚障害者と同行されているのか、
外から見た目では判別できない」

という見解があるかもしれません。

しかし、この問題があるからといって

「障害者の負担もしょうがない」

と考えるならば、それはおかしいのではないでしょうか。

本来ならば、社会の側が解決すべきことだと思います。
そこがおかしくなる原因だったのではないかな?
と疑問に思います。

これは、費用負担を障害者に求めて解決させているのは、
おかしいのではないかな?
という疑問が残る事例です。

本来は、例えば、通訳者に派遣証明書を携帯させ、
その提示があれば、無料でどこへでも同行できるように
する法律をつくるとか・・・。

まだまだ通訳者の資格が社会的に低く評価されている
ことも、こういう問題が解決しない一因なのかもしれません。

聴覚障害者のアクセスの不自由を解決するには、
例えば「(仮称)情報・コミュニケーション保障」による
法整備が必要になっている、と思います。


≪4.森美術館の、理解しがたい入館料システム≫

【森美術館への質問内容】
「身体障害者は、国立美術館などで障害者手帳を提示すれば、
本人と介護者1名までは無料で入場できます。
ただし、森美術館の場合は、入場料半額と受付で聞きました。

それでは、介護者の入場料はどうなるのでしょうか?
聴覚障害者の場合、介護者とは、手話または要約筆記通訳者
のことを指している場合もあります。

この通訳者が同伴する場合、その分のお金も障害者本人が
払うことになるのでしょうか?」


【森美術館からの回答(2008年7月現在)】

「お尋ねの件、現在森美術館では、障害者手帳をお持ちの
お客さま及び介助の方1名まで、半額で入館して
いただいています。
国立美術館では無料とのことですが、森美術館の場合、
エントランス・チケット等を52階TCVと共用しているため、
下記のような料金体系になっております。

また、手話や要約筆記通訳者の方の入館料ですが、
この方の入館料は、障害者の方或いは通訳者の方に
お支払いいただくことになります。

①障害者手帳一般 1名 + 介助者一般 1名 ⇒ ¥750 + ¥750 =¥1,500
②障害者手帳一般 1名 + 介助者学生 1名 ⇒ ¥750 + ¥500 =¥1,250
③障害者手帳一般 1名 + 介助者子供 1名 ⇒ ¥750 + ¥250 =¥1,000
④障害者手帳学生 1名 + 介助者一般 1名 ⇒ ¥500 + ¥750 =¥1,250
⑤障害者手帳学生 1名 + 介助者学生 1名 ⇒ ¥500 + ¥500 =¥1,000
⑥障害者手帳学生 1名 + 介助者子供 1名 ⇒ ¥500 + ¥250 =¥750
⑦障害者手帳子供 1名 + 介助者一般 1名 ⇒ ¥250 + ¥750 =¥1.000
⑧障害者手帳子供 1名 + 介助者学生 1名 ⇒ ¥250 + ¥500 =¥750
⑨障害者手帳子供 1名 + 介助者子供 1名 ⇒ ¥250 + ¥250 =¥500

尚、MACGなど展示により入場料が異なることがありますので、
ご注意ください。」




入館料のシステムも、きわめて複雑で、なぜこのようになっているのか、
理解しがたい。
可能な限りの厳正なサービス料金設定と言えば、確かにそうなるのだろうけど。


※「③⑥⑨介助者子供1名」とは、どういう意味で言っているのでしょうか?
理解に苦しみます。

例えばろうあ者にとっては、子供は本当に介助者(通訳者)
と言えるのでしょうか? 
その役割を果たしえるのでしょうか?
(これは難聴者でも、おそらく同様になるかもしれない)

おそらく「介助者」という言葉についての森美術館側の定義が、
身体障害者の法律や聴覚障害者側の理解とは異なっている
と考えられます。

②⑤⑧の「介助者学生」も、同様に疑問です。
聴覚障害者にとっての介助者の意味とは、この場合、
通訳者ではないでしょうか?

つまり、美術館に入る時も

「コミュニケーションのために通訳者が必要だからである」

という考えでしょう。

人間社会では人と会えば、コミュニケーションをいつだって
必要とします。
それは美術館での中でも、例外ではありません。

聴覚障害者の場合の「介助者」とは、それが通訳者の場合は、
美術館に一緒に入る健聴者や同障者と会話をするために
必要ですから、行政に通訳者を派遣してもらっています。

いやそもそも、通訳者は人と話さなければならない場面では、
どこでも必要です。

その通訳者を入れるだけなのになぜ、美術館がお金をとるの
だろうか?

私は、その根拠も聞いてみるべきだったかもしれません。

確かに美術館の立場からは、通訳者もお客様なので、
それには一定の理解はし「仕方がない」という思いも
ありますが…。

もしも聴覚障害者が通訳者の分の入館料を払いたくなければ、
通訳者をそこに置いて入る方法もあるが、一体誰が、
コミュニケーションも出来ないで、健聴者の友人、
家族と一緒に美術鑑賞を楽しめるでしょうか? 

難聴だからといって、館内で大声で会話をするわけにも
いきません。
コミュニケーションもできず、一人で楽しむべきものなのだと
いうのでしょうか?

もしも遠くから父母や友人、それと通訳者を伴って来て、
美術館で有料と知ったら(しかも森美術館の値段は
決して安くはない)、楽しみにして来たとしても諦めて、
歩いて15分のところにある、国立新美術館のほうに
行くのではないでしょうか?(これは実際にありました)

これは、健聴者がつくったバリアの例になると思います。

「障害者が通訳者の分も負担しなければ ならない」のか? 森美術館の事例_a0196876_20585196.jpg

by bunbun6610 | 2011-07-03 20:48 | バリア&バリアフリー

ある障害者から見た世界


by bunbun6610