手話のダイグロシア

当ブログ

『手話の持つ可能性』
〔2011-06-18 00:33〕

でも少し述べましたように、
手話の実情についてもう少し詳しく話したいと思います。

私は80才の高齢ろうあ者の手話を見たことがあります。
手話が禁止されていた時代を生き抜いた、ろうあ者です。

高齢ろうあ者の手話は、今の手話とはだいぶ違うもので、
しかも、日本語では同一の意味に翻訳される単語の表現が、
一人一人違っていました。

また同じ人でも、単語表現の数は少ないのですが、
意味はそのときに変わる、という具合に、でした。
高齢ろう者の手話単語の一例には、次のようなものがありました。
いずれも、今使われている標準手話とは全く違います。

  「戦争、空襲」 →関東の空襲の様子、米軍爆撃機が空に見えて、
             爆弾を落としていく様子をCLを使って表現。

  「マグロ(鮪)」 →マグロをさばく、独特の細長い包丁で、
             マグロを解体する様子をCLで表現。

  「カツオ、鰹節、高知県」 →鰹節を昔の削り道具で削る様子を、
                   CLで表現。

  ※ CL …類辞(classifieres)。類辞はものの大きさや形、
        材質などを表す。(手話学より)

単語だけを見ると、それはモノマネ、身ぶりを
取り入れている表現法ですが、
その表し方には、日本語対応手話とは
違ったルールがあることがわかりました。

一方、最近の若いろう者の手話は、
指文字、口型も口話(日本語)を多用していて、
文法は日本語と同じ、つまり難聴者の手話と
同じ人もいます。

特に普通学校にしか通わなかった人や、
ろう学校からインテグレーションした人は、
日本語を話せる人も多いので、
日本語が日常生活で使用する言語になって
いるようです。

さらに、社会に入ってからも、職場の人に手話を
使ってもらえる時代に突入したこともあり、
健聴者と日本語対応手話で話す機会も増えているので、
そういう会話が自然と増えているようです。

そうなると手話も、そうした生活から影響を受けるようになります。

手話はこのように、社会環境の変化に伴い、
一応は世代ごとに変わってきている、
と見てよいと思います。

ただ私が、ここで言いたいことは、
最初から繰り返しているように、
文法が全く異なる手話が混在している、
という事実のほうです。

これをわかりやすく図表にした資料に

『手話のダイグロシア』

というものがあります。


 →http://www.asahi-net.or.jp/~ai2s-tnd/risho_univ/2008/risho_2008_1.pdf


 →http://www.asahi-net.or.jp/~ai2s-tnd/risho_univ/2006/risho_20060415-20060702


本当は、もっとわかりやすい
ダイグロシア図表があるのですが、
インターネットで探してもなかなか
見当たりませんので、上の資料でご容赦願います。

これを参考にして、

高齢者のろう者Aさんは、この図表のどこらへんに
位置する手話を使っているかな?

中年ろう者のBさんの場合は?

若いろう者でろう学校卒業のCさんの場合は?

デフ・ファミリー育ちのDさんは?

普通学校にしか通っていない難聴者Eさんは?

健聴者中心の手話サークルでは?

などと、いろいろな使用例を考えてみます。

すると、手話というのは厳密には、
日本手話しか使わないとか、
日本語対応手話しか使わないというようなことは例外で、
実情はそれぞれが混在して無意識に
使われているといえます。

また、使い手によってもその使用割合は
バラバラで、相手によっても使い分けられている
のだということが、理解できると思います。

勿論、一般にはどちらの手話も「手話」と呼ばれています。

ただ、これに異論を唱える人々もいます。

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by bunbun6610 | 2011-06-21 00:16 | 手話
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