誤解されている手話

「誤解されている手話」という言葉を、
よく聞きます(手話本などで見かけます)。

例えば

「手話は手話であり、日本語の代用ではない」(ろう者〔Deaf〕)

という意味とか、その他にもさまざまな意味があります。

相手がろう者(Deaf)、中途失聴・難聴者に関係なく、日本語の語順そのままに
手話を表しても通じる手話文もあることは確かです。

逆に、意味は同じでも、語順を変えて表したり、あるいは語順は同じでも
表情などにより、意味が変わる手話もあります。
そのような広がりを持つのが、日本手話の特徴ではないかと思います。

誤解というのは、例えば、
手話サークルの健聴者で、5年以上は手話を勉強した人が、
こう言いました。

「私は最初、手話は日本語と違う、と思っていました。
外国語と同じだと。
でも習っているうちに、手話も日本語だと気づくようになりました」

手話サークルだけで手話を勉強している人には、こう思ってしまうのは
無理もないと思います。
私も初めの頃は、だいたいそんなふうに考えていました。

その考え方が変わってきたのは、手話をもっと深く勉強しようと思い
『手話学』というものに触れてからでした。

〔参考〕
 →http://www.amazon.co.jp/%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E6%89%8B%E8%A9%B1%E5%AD%A6-%E7%A5%9E%E7%94%B0-%E5%92%8C%E5%B9%B8/dp/4571120788

ところで、外国語も日本語と同じように音声と書記があります。
そういう点では、同じ性質の言語だと思います。
ところが手話は「目で見る言葉、動く言葉」と言われます。
ですから、日本語と文法が違うという理由だけで「外国語のようなもの」と言うことも、
どうも違うような気がします。
「日本語と外国語は文法が違うように、手話も文法が違う」という意味でならば、
確かに言えますが。

それから、手話単語は日本語に置き換えることができ、語順も同じだからといって

「日本手話も日本語と同じ」

だとは言えません。
その手話が日本語対応手話のことに限ってのことだとは、言えると思いますが。

初めに「手話には「日本手話」と呼ばれるものと、

「日本語対応手話」と呼ばれるものとがある」

と明確に区別し説明したのは、ふたつの手話の混同視は決して、
手話の正しい理解のためにはならない、
と考えたからなのです。

たしかに、日本語対応手話というものがあり、それを見たら皆

「手話は日本語と同じだったんだ」

と思うのも、無理のないことです。

しかしだからといって、上のような健聴者の理解のしかたで構わない、
というわけにはいかないと思います。

なぜなら、それが文法上正しい手話なんだ、ろう者の手話の方がおかしいんだ、
という誤った見方をする健聴者が増えているからです。
健聴者がろう者から手話や、その言語の歴史的背景について学ばなくなったのは、
それが原因だとも言われています。

健聴者は

「どちらも仲良くして、一緒に使えばいいじゃないか」

と思うかもしれません。
けれども、言語というのはろう者への通訳にも影響し、その選択次第では
人権を擁護するか、あるいは逆に侵害することにもなってしまう(※A)
ので、
ろう者にとっては、この問題は非常に大きいはずです。

健聴者や中途失聴・難聴者も日本語で手話を学びやすければいい、
というものではありません。

本当の「仲良く」というのは、曖昧にすることではありません。
「互いに認め合う」ことだということを、健聴者は忘れないでほしい、
と私は思います。

というわけで、日本手話と日本語対応手話の違いについて、
正しく理解していただけたら、と思います。
どちらが正しい手話、間違った手話とか争うのではなくて、です。

勿論、中立的・客観的に見ると、どちらの手話にも一長一短はあります。
「要は、使い分けることの問題」といわれることもありますが、それはまた後で、
詳しく述べてみたいと思います。


(※A)「日本手話」と「日本語対応手話」のどちらも「手話」として認められている
といっても、どちらの手話を使っても相手に正しく通じるとは限りません。
手話初心者の健聴者にろう者の話す日本手話が理解できない人がいる
のと同様に、日本語対応手話ではよく理解できないろう者もいます。
通訳は情報保障や意志疎通を図ることが目的なので、利用者が理解できるように
努力しなければなりません。



このように、利用者の言語文化と通訳の質的問題、人権問題は深く関係していると
言えるので、難しい面がある問題なのです。

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by bunbun6610 | 2011-06-18 21:25 | 手話
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